流れ星スペシャル
「だけどわたし、慎ちゃんが作ったお好み焼き食べたいもん」
「そんなんええから帰れっ」
桂木さんの声が大きくなったので、松田くんが慌てて間に入った。
「あっは。店長、意外と亭主関白やな。いいじゃないですか、奥さんに一枚焼いてあげてくださいよ~」
「そうやん。慎ちゃんがお好み焼き焼けるなんて、わたし全然知らんかったんやから。家では全然作ってくれへんかったやん」
プクッと可愛く、リカコさんが頬を膨らませる。
「あ、いやいや……。全然できへんかったのを一生懸命練習したんですよ、店長は」
オレも思わず口を挟んだ。
あんなに猛特訓していた夫のことを、この人はまるで知らないんだ……。
「そんならわたしが、その練習の成果をみてあげるね」
無邪気にそう微笑むと、リカコさんはもうメニューに手を伸ばして、何を食べるか物色しだした。
う。桂木さんのピリピリモードなんか、まったくスルーで……。
「勝手にしろ」
店長はそう言い捨てると、鉄板の上の焼きそばをガチャガチャとかき混ぜた。
「ねー、慎ちゃん、どれがおいしい?」
「全部」
「じゃあ慎ちゃんは焼くのん、どれが得意?」
「全部ヘタ」
ちぐはぐな会話は続く。
プ。桂木さん、めっちゃ怒ってるやん。全然伝わってないけど。