流れ星スペシャル
「女性にはこれが人気ですよ。チーズが苦手じゃなかったらお薦めです」
メニューを指しながら、松田くんがナイスフォロー中。
「じゃ~それにする!」
リカコさんは注文を決めると、松田くんにニコッと笑いかけた。
ピロロロ~。
電子音が鳴り、厨房の小さなプリンターに、その受注が印字される。
「店長、18番エビチーズお願いします」
オレがそう振ると、桂木さんはギロッとこっちをにらんだ。
「トシ、お前が焼いて」
「いや、こっち手一杯ス」
素知らぬ顔でそう答えたら、店長は渋々「了解」と言った。
「らしくないなぁ、桂木さん」
コテを動かしながらオレが笑うと、桂木さんはあきらめたようにつぶやく。
「お前はリカコのデリカシーの無さを知らんから、そういうことが言えるねん」
そうかな?
オレにはこのふたり、案外仲良く見えるけど。
リカコさんは桂木さんのこと好きそうだし……。
桂木さんだって、他の人には見せない顔を見せている。
離婚寸前っていうから、もっと冷ややかな関係なのかと思っていた。
それともあれから状況は変わったんだろうか……?
現に今日だって待ち合わせていたようだし……。