流れ星スペシャル
「きゃーリカコさん? 久し振りー!」
休憩で、外に食事に出ていたアズが戻ってきて、懐かしい先輩を目ざとく見つけた。
「沢井~!」
リカコさんも立ちあがり、ふたりで手を取り合って喜んでいる。
「沢井がんばってるねんてなぁ。綾ちゃんから聞いてるよ」
「うん、今こーゆーことになってて……」
照れくさそうに笑うアズの頭のバンダナを、リカコさんがよしよしする。
「可愛~っ、女子高生みたい!」
「あっは。そのコメント桂木さんと同じやし」
そこらへんで、先日聞いてしまったふたりの夫婦事情を思い出したのか、アズはちらりと桂木さんへ視線を向けた。
「沢井さん、裏でドリンクとサイドメニュー任せてええかな?」
桂木さんはアズを焼き場の裏側へ下げる。
「あ、はい。じゃあリカコさん、ゆっくりしてってくださいね」
そう言い置いて、アズは厨房の中へと消えていった。
出汁が切れたので取りに行くと、アズはそこで黙々とドリンクを作っている。
「あのふたり、どーなんかな? 離婚するって話やったけど」
小声でささやくと、アズは手も止めずに答えた。
「大丈夫やよ、きっと……。いろんなことを乗り越えたから、リカコさんもこうしてお店に来たんやない?」
自分で言っておいて、アズは大きくうなずいた。
まるで自分に言い聞かせるように。