流れ星スペシャル
「あのな、リカコはオレと離婚したいんやろ?」
今度は子供に言い聞かせるように、桂木さんが言った。
「したいってわけじゃない」
なぜか肯定しないリカコさん。
「だったら書くなや、そんなもんっ」
とうとう桂木さんがブチ切れて、話が終わった。
重~い空気の中、カチャカチャと調理を続けるコテの音が響く。
「それ書けへんかったら、リカコは困るんやろ?」
しゅんとうつむいてしまったリカコさんに、やっとまた桂木さんが話を向けた。
「あいつと一緒になりたいんやろ?」
コクンと小さく、リカコさんがうなずく。
うわ……。
「だったら一時の感傷に浸って、離婚したくないとか言うたらあかんねん」
「だってわたしはホンマに……こうなってしまったことが悲しかったから」
「悲しくても離婚するんやろ? だったら期待させるようなことを言うな」
「慎ちゃん……」
「リカコがそーゆーことを言うから、オレはずっと振り回されて来たんやん。もういい加減学習してくれ」
そこで桂木さんは言葉を切り、大きく息をついた。
「だって慎ちゃんのことだって、好きなんよ? キライになって別れるんとちがうから、それだけはわかっておいてほし……」
「お前なぁ、好きっていう言葉の意味知ってる?」
リカコさんの言葉をさえぎって、桂木さんが切り返した。