流れ星スペシャル
「わざわざ別れる夫の職場まで来て、同僚の前で離婚届書いて……。そんなことされるオレの気持ち考えたことある? オレなら、好きな人にこんな思いは絶対にさせたくない」
「慎ちゃん……」
リカコさんの美しい瞳から、涙がはらはらと流れ落ちる。
「……ゴメンなさい」
桂木さんはもう何も言わずに、焼きあがったお好み焼きをリカコさんの元へと運んだ。
「食べ終わったら、それ書きながら待ってたらええから」
彼女はコクンと頷き、ポロポロと涙をこぼしながらお好み焼きを食べる。
「疲れるねん、リカコ」
オレの横に戻ってきて、桂木さんがボソッとつぶやいた。
確かに……。これはキツイ。
この『罪のなさ』には、罪がありすぎる。
焼きの注文をこなす合間に、桂木さんがハンディに何やら入力しているのに気がついた。
プリンターから出てきたロール紙には、『18番 トマトサラダ 1』というのが印字されている。
そうして桂木さんは冷蔵庫から野菜を取り出すと、調理台に楕円のボウルをセットした。
その上にプリーツレタスを敷き詰め、よく冷えた新鮮なトマトをカットして、ふんだんに盛りつける。
スライスオニオンをトッピングして、ドレッシングをかけると、桂木さんがオレに言った。
「ごめん、トシ。18番にこれ頼む」
「はい」