流れ星スペシャル
カウンター席は目の前だけど、大きな鉄板を挟んでいるから、厨房を出て回り込まないと料理は運べない。
オレがサラダボウルをリカコさんの前に置くと、まだ涙を残したキレイな顔がパッと明るくなった。
「ありがとう。わたし、トマト大好き」
罪のない可憐な笑顔。
あー、たぶん……。
たぶん純情な桂木さんのことだ。
この笑顔の前であの人は、まるで無力だったんだろうなって、軽く想像がつく。
焼きに戻り、ふと横を見あげてドキッとした。
桂木さんが真っ直ぐに、リカコさんを見つめていたから……。
時折涙を拭いながら小さな唇に上手にトマトを運ぶリカコさんを、桂木さんはそっと見つめていた。
心のすべてが、そこに持っていかれているのがありありとわかる、そんな表情だった。
そんな桂木さんを見るのは、もちろん初めてのことで、何だか見てはいけないものを見てしまったようで、目をそらしてしまう。
せ、切ない……。
「店長……。あの、焦げる」
「えっ、あっ、ゴメン」
我に返った桂木さんは、慌ててお好み焼きを引っくり返すと、ユースケに焼きを変わってもらった。