流れ星スペシャル


けれどリカコさんは哀しそうに、ただ首を横に振る。


「でもこれからはもう、慎ちゃんが一番になることはないねん」


「そう……やったな」


細い腕から、桂木さんの指がほどけた。




リカコさんはカウンターに伏せられた今日の食事代の伝票を手に取る。


「あのね、慎ちゃん……。お好み焼き、めっちゃおいしかったよ」


「そうか?」

「うん。今まで食べた中で、一番おいしいお好み焼きやった。お料理なんか全然出来へんかったのに、慎ちゃんはほんまに一生懸命練習したんやね」


そう優しく笑いかけられて、一瞬、桂木さんが言葉に詰まったのがわかった。


「……ハ」


やっと出た作り笑いが微かに震える。


「じゃ」


そのまま桂木さんは顔を背けて、足早に事務室へと消えて行った。

ちょうどホールにいたアズがレジに入り、リカコさんを見送っている。



「トシさん、あの、焦げてます」

「えっ、あっ」


ユースケの言葉に鉄板を見ると、お好み焼きのフチがチリチリと黒く焦げていた。


「しまった」

「はは、ボク、トシさんが料理焦がしたとこ、初めて見た」

「オレも」


急いで新しいものを焼き直す。


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