流れ星スペシャル
「ユースケもうあがってええよ。助かったわ、ありがとう」
オレがそう言うと、ユースケはヘンな声をあげた。
「えーっ、今?」
「ちょうど11時半やで」
「いや、今、事務室に入るんマズいでしょ。店長きっと泣いてる……」
「う……ん。けど早くせな終電逃すで」
他人事なのでそう済ますと、ユースケが泣きついてきた。
「ト、トシさん、一緒に来てくださいよ~」
「えっ、イヤや。絶対にイヤ。第一オレ、これ焼かなあかんし」
「そんなぁ……」
オレが思いっきり首を横に振り、ユースケが情けない声を出していると、不意に背後から声がした。
「ゴメン。遅なったな、ユースケ。早よあがりや」
「えっ、桂木さん!」
「もうええんですか?」
振り向くと、またユニフォームに着替え直した店長が立っている。
「はは、いろいろと聞こえてしまった、かな?」
オレたちの引きつった顔を見て、そうふんわりと笑ったのは、普段通り大人な桂木さんで……。
「「い、いえ」」
ふたりしてブンブンと首を横に振った。