流れ星スペシャル


年末年始、怒涛の如く日々は過ぎた。

忘年会、正月、新年会、旧正月の外国人観光客の来店ラッシュ……。

2月も半ばになり、それがやっと落ち着く。



「なぁトシくん、最近桂木さんおかしくない?」


そんなある日、アズがオレにそうささやいた。


「おかしいって?」

「なんかな、ボーッとしてる」

「そーか?」


開店準備中の厨房で、仕込みに使った調理器具を洗う後ろ姿を見ていた。

桂木さんは、大小様々なボウルやザルをざっと水洗いして食洗にかけている。


「普通やん」


大きな手がレバーをガチャンと下ろすと、食洗機が動き出した。

ブッシャーッとお湯が噴射される水音と、
ウィーンと唸るモーター音。


「ちゃうねん。ほらほら、見て」


アズが言うので見ていると、桂木さんはレバーに手をかけたまま、ステンレス製の食洗機をぼんやりと見下ろしていた。


「あ……れ?」


そのままの形で、じーっと佇んでいる。


「な?」

「ほんまやな」


桂木さんはしばらくぼんやりとしていて……、それから店の電話が鳴り、その音でこっちの世界へ戻ってきた。


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