流れ星スペシャル
結婚式で美しい花嫁をエスコートする桂木さんの凛々しい姿。
みんなに冷やかされ、祝福と羨望のパンチを浴びて照れる笑顔……。
わたしが知っている入社したての頃の、どこか不安げな桂木さんは、もうそこにはいなかった。
あんなに夢中になっていた前カレからリカコさんを奪い、並み居るライバルをものともせずに、スピード婚に持ち込むなんて……。
不器用そうで、純情そうで、特に女性には奥手だと思われた桂木さんに、そんな芸当ができるとは思いも寄らなかった。
仕事だってそう。桂木さんは今や一人前の営業マンとして、立派に仕事をこなしている。
今日だって難しい調整を任されて、ひとりで取引先と渡り合ってきたんだろうし……。
「あの、待っててくれてたんやないですか?」
不意に低い声が響いた。
「え?」
「精算。ボク帰るの遅くてすみませんでした」