流れ星スペシャル
「ううん。月末やし、残業したい仕事ならいっぱいあるから」
笑顔でそう答えると、桂木さんの口元も柔らかくほどけた。
「ありがとう」
低い声が耳に心地よかった。
ああ、自分はこの声を聞きたくて待っていたんだと自覚してしまう。
わたしはまだ……この人のことを好きなんかな?
自分のデスクに戻り、桂木さんは今からまだ仕事を始めるようだった。
あかん、あかん!
その姿から目を逸らし、さっさと帰り仕度を始める。
あの人はもう、リカコさんのもの。
早く見切りをつけて、もっといい人探すんやもん!
そうしてわたしは、その日会社を後にした。