流れ星スペシャル
車中から眺める外の景色は、深い闇から少しずつ色彩を取り戻しつつあった。
街灯が白く鋭く規則正しく並んでいる。
いつの間にかミナミのネオンからはすっかり遠ざかり、タクシーは新なにわ筋を北へと高速の高架下を抜けていく。
「店長、頑張りますよ、オレ」
「ん?」
「世界制覇するんでしょ?」
「ああ」
「明日から……いや、もう今日やな。今日から飛ばしていきますし」
「おっ」
「覚悟しときや。オレ、人使い荒いですから」
「え、オレがお前に使われるん?」
「当ったり前やん」
そう言いながら桂木さんを見ると、シートにもたれたまま、その目が少しだけ笑った。
「泊まってったら?」
オレのマンション前に停まったタクシーの中で、一応そう誘ったけれど、桂木さんは自分の家への道をドライバーへ告げる。
「トシ」
「はい?」
「ありがとう。もう大丈夫やから、オレ……」
「いやいや、散々迷惑かけといて、それ言います?」
車を降りながら、思わず笑ってしまった。
「今日は迷惑かけていいって言うたやん」
スネる桂木さんを乗せて、タクシーは走り去る。