流れ星スペシャル
夕方――
オレが出勤すると、桂木さんはもう厨房でせっせと働いていた。
何事もなかったかのように。
うん。あの人らしい。
「おはよ」
流しで布巾を洗うアズに声をかけた。
「ぉは……ょ」
消え入りそうな声に驚いて、顔を見てさらにビックリ。
「お前、どーしたん、その顔!?」
「なんでもない」
そう答えたアズの瞼はボコッと赤く腫れあがっていて、人相まで変わっていた。
「いや、なんでもなくないやん」
けれどアズはオレの質問をスルーして、ただ布巾を洗い続ける。
「もぉっ、トシ! ちょっと来て」
うるるんがオレの腕をガッとつかみ、厨房の外へと引っ張っていく
「そぉっとしといてよ。アズちゃん昨夜からずっと泣いてたんやから」
「あー……。桂木さんが可哀想って?」
「は?」
オレが聞くと、ウルルンはあきれ顔になる。
「大好きな店長が、あんな圧倒的な強さでリカコさんのことを想ってるって知って、アズちゃん、ショックやったんやん」
「へ……え。けど離婚したんやで? むしろチャンス到来やろ?」
「わかってないなぁ、店長って全然表に出せへんけど、あんなに熱く切なくいっぱいいっぱいになるくらい、リカコさんを愛してるんやって実感してしまったわけよ」
「はぁ」