流れ星スペシャル


「店長の胸の中は200パーセントくらいリカコさんで一杯で、自分の存在なんか点ほどもないんやって思い知ったわけ」

「ん~、そんなもんかなぁ?」

「リカコさんめっちゃ美人やし、ああいう人を一途に想う気持ちを、引っくり返す自信なんてないもん。アズちゃん絶望してしまったんやな、きっと……」


ガッシャーンと、厨房で皿が割れる音がした。アズが食洗機から洗いあがった食器を、カゴごと床に落としてしまったらしい。

アズも200パーくらい桂木さんで一杯ってことな……。


「大丈夫?」


割れた皿の片付けを手伝いながらそう聞くと、微かな声が返ってくる。


「ゴメン……」って。


普段からしっかりしていて、何かあっても顔に出さずに仕事するアズは、やっぱ大人やなって思ってたんやけど……。

まー、こーゆーときもある。

つーか、なんかちょっといじらしかった。

オレ的には複雑な心境やけどな。


営業が始まってからも、アズはオーダーの入力ミスをしたり、料理を運ぶ卓を間違ったりで……。


「10番、豚玉あがるよー」

「は……い」


オレが焼いたお好み焼きをチリトリに乗っけるとき、アズの手がすべって、それがするんと床に落ちた。


「キャ、ゴメ……」

「いい。焼き直すから」


オレがそう言ったとき、ついに桂木さんがキレた。


< 432 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop