流れ星スペシャル


「お前が行けば?」


そう言われた。


「は? なんで?」


と聞いても、桂木さんは何も言わずに仕事を続けている。

まったく。意味が解らん。

しかしながら桂木さん、いっこうに事務所へ向かう気配なし。

あー、もう!


「明日待ってるって言ってくればいいんですか?」


そう聞くと、桂木さんは小さくうなずいた。

何それ?


とりあえず作りかけの焼きそばがあがった時点で、事務所へと向かった。

コンコン。

一応ノックして中へ入る。

あれ?
誰もいない?

そう思ったとき、足元でしゃくりあげる声がした。


「ヒィ…ック」


よく見るとハンガーラックの脇で、アズが座り込んで泣いている。

抱えた膝に額を押し当てて、まるで小さな女の子みたいに。

えっと……。

とりあえず仕入業者の販促品のタオルがあったから、袋を破ってアズの手に握らせた。



< 434 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop