流れ星スペシャル


で、そんなメールが、どうしてわたしのもとへ届くかっていうと、それはわたしが流れ星の経理を担当しているから。


毎晩お店を閉めると、富樫店長はその日のレジレポートを、社長とわたしのパソコンに写メしてくる。


そこには1日の売上金額や来店客数が集計されていて、わたしはその数字を会社の会計ソフトに打ち込むことになっていた。


だから富樫店長の『辞めますメール』には、昨夜のレジレポートが添付されていて、つまり彼は売上報告のついでに、こんなことを告げてきたってわけだ。




「えっ、何これ? ありえへんやろ」


メールを見た綾香さんがあきれた声を出した。


「メール一本で会社辞めるってこと? 前もって相談とかなかったん? 社長は? 知ってはんの?」


「いや、たぶん……」


社長も知らなかったんだと思う。




さっきからフロアの一番奥にある社長席で、常若社長がじっと腕組みをして、パソコンの画面を睨んでいるのが見えた。


毎朝誰よりも早く出社してくる社長のことだから、きっともう、このメールを読んでいるはず。


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