流れ星スペシャル


「おはよ、アズ」


各テーブルに置いてあるソースを補充していると、いつのまにかトシくんが来ていた。


「昨日はゴメンね」


ペコリと頭を下げると、トシくんは「ハハ」って笑う。


「オレをフッたこと?」

な~んて。


「もー、そんなんえーから」


叩こうとしたら、ヒョイとよけられて、


「オレ、マジやけど……」


とめいっぱいカッコよくささやかれた。

フフ。

冗談とはいえ気持ちが華やぐ。

まったくトシくんには、何回こうして心をほぐしてもらっただろう。


「まー、春になれば忙しくなるし、ちょうどええんちゃう?」


なんて明るく言われた。


「春休み、ゴールデンウィークと続くから、忙しくてバタバタしてるうちに、違う景色も見えてくるやろ」


そう言うとトシくんは、厨房のほうへと目を向ける。


「まー、ちょっと時間かかるけどな、あの人の場合……」


いつか見えるという違う景色……。

違う人を好きになるってこと?

だとしたら、ホントにそんなの見えるのかな?


桂木さんも……。
わたしも……。



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