流れ星スペシャル
「えっと……ここらへんかな?」
スマホのマップを見ながら、裏ナンバを行く。
トシくんが検索してくれた目的地を目指して。
そう、桂木さんが住むマンションへ――。
歩いてもたいしたことない距離だって聞いたから、自転車は置いてきた。
一歩ずつ気持ちを固めたくて……。
てゆーか、自転車だとあっという間に着いちゃって、やっぱ怖くなって逃げ出してしまいそうだったから。
手にしたトートバッグの中には、さっき商店街でゲットしたものが入っている。
あ、ここ?
ボクシングジムの裏手を少し入ったところで、トシくんから聞いたマンションの名前を見つけた。
10階建てのワンルームマンション。
ここの6階に桂木さんは住んでいるらしい。
おそるおそる中へ入ると、小さなエントランスは二重扉になっていて、オートロックのインターホンが設置されていた。
部屋番号を押してチャイムを鳴らし、住人がロックを解除しないとその奥へは入れないやつ。
「え、ムリやん」
思わず声に出してつぶやいた。
だっておそらく桂木さんは酔いつぶれて寝てる。
か、意識はあってもダルくてチャイムなんかには出ないパターンだろう。
フー……。
まーとりあえず押してみるけど。
気負っていた気持ちが急に楽になり、躊躇なく桂木さんの部屋番号を呼び出すことができた。
602って。