流れ星スペシャル


「あ、なんか気をつかわせて、すんません」


ペコリと頭を下げる桂木さん。


「い、いえ。こっちこそ早とちりしちゃって」


シラフの彼にわたしも謝る。


「で、では、これで」


これはもう立ち去るしかない。

だってもう、ここにとどまる理由がないもん。


「あ」


そうそう。

バッグに手を突っ込んで、さっき見つけたものを桂木さんに手渡した。


さっき――

ここへ向かう途中、繁華街を出る前に、手に入れたもの。

コンビニへ立ち寄って、トシくんに言われたものを買おうと思っていたんだけど……。


「これは?」


キョトンと首を傾げる桂木さん。


「DVDです。通りがけに24時間営業のレンタルショップがあって……。こーゆーの観たら気がまぎれるかなと思ったので」


そう。

コンビニの手前のレンタルCD屋さんで、わたしは足をとめたんだ。

旧作フェアをやっていて、店頭のモニターに流れている映像に目がとまったから。


「あ、この映画……」


手にしたパックから取り出したDVDを見ながら、目の前の桂木さんがつぶやく。


「あ、うん。桂木さん、この監督さん好きだったかなと思って……」


そんな話を、昔したことがあった。

会社の花見の宴席で……。



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