流れ星スペシャル
ハッ。
でも、もし覚えているとしたら、そんなDVDをわざわざ借りてきて差し出すなんて、
執念深いというか、
あてつけがましいというか、
かなり怖いことをしてる……かも?
と、いま気がついた。
おそるおそる見あげると、彼は開けたドアに体をはさむようにして支えながら、じっとDVDに目線を落としている。
そのまま全然動かない……。
え、覚えてる?
そして、困ってる……?
「あ! 他にも2、3枚借りてます。コメディとかアクションものとか。桂木さん、もしも気持ちが落ち込むようだったら、そんなの観て癒されちゃってください」
やたらあせって、大声になる。
「じゃーDVDは、明日わたしに渡してくれたら、ショップへ返しに行きますんで」
なんて言って頭をさげた。
ダメだ、うるるん。
ゴメン、トシくん。
酔っぱらった桂木さんを押し倒すのは、わたしには至難のワザだと思っていたけれど、
酔っぱらってない桂木さんに迫ることのほうが、もっとムリだもん。
もうあきらめて退散しようと顔をあげたとき、
黒い瞳がわたしの目の中をのぞき込んだ。