流れ星スペシャル
「ブッハ」
もう耐えられなくなってオレが吹き出すと、桂木さんの口がポカンと開いた。
「え? 知ってたん?」
「さっきアズから聞きました。まー、こーなることは、だいたいわかってましたけどね」
「そっか……」
「どうぞお幸せに!」
それでもまだ気まずそうなので笑顔で祝福すると、やっと桂木さんの顔もふんわりとほどける。
「ありがとう」
それはやっぱり今までで一番幸せそうな顔……。
だからまぁ、許してやることにするか。
「店長、ふやけてんと世界制覇の件も頼みますよ」
「おう、まかせとけ。飛ばしていくぞ」
「はいっ」
頼もしい言葉に、デカい声でこたえた。
シャカシャカとキャベツを刻む音。
シュンシュンと湯の沸く音。
アズは洗い場で米をといでいる。
「おはようございまーす」
早番のうるるんが出勤してきた。
ステンレスの調理台の上には大きなボウル。
中には流れ星特製のお好み焼きの生地が、たっぷりとスタンバイしている。
「おっしゃ、のれん出して」
桂木店長の元気な声が飛ぶ。
もうすぐ開店。
オレは息をつめてカチッと、鉄板に火を入れた。