流れ星スペシャル
その目は、入社したてのあの頃よりも、ずっと不安げに揺れている。
「どう……したん?」
問いには答えず、桂木さんはスッと目を逸らした。
そうして歪んだ字で伝票にサインをすると、そのまま席には戻らずに、オフィスを出て行ってしまった。
「中村課長、ちょっとええか?」
その直後、会議室から社長がヒョイと顔だけ出して、大声をあげた。
営業一課の中村課長を中へ呼び入れている。
の、納期の件、大変なんやろか?
確か金曜日、桂木さん謝りに行ってたよな。
うちが仕入れる電子部品の納入が遅れて、客先のおもちゃメーカーの製造ラインが止まってしまうとか……?
もしそんなことになったら、一大事だ。
桂木さん、納期調整がうまくいかなくて、社長に怒られたのかな?
あ、だから社長は海外に飛んで。仕入れ先の部品メーカーに直接掛け合うんだ……?
尋常じゃない桂木さんの様子に、わたしが想像できるのはそこまでだった。
でも事実はそんな推察を遥かに超えていて……。
昼一、スゴイ勢いで飛び交った社内メールで、わたしはそれを知ったんだった――。