流れ星スペシャル


電光石火のごとく行き交うメールの文面に、わたしはただただ固まっていた。


無言で眺めるパソコンの画面が、次第にぼんやりと滲んでいく。


あ、あかん……。


わたしが泣いたら、ヘンやんか。




あわてて立ちあがり、トイレへと向かう。


奥さんでも恋人でも愛人でもないくせに、なんで涙が出てくるんやろ……?


女子トイレの個室に飛び込み、ガタンと閉めたドアにもたれた途端、涙がふるふるとこぼれて落ちた。





手……震えてた。




小刻みに震える桂木さんの長い指。

うまく字が書けなくて、歪んでしまったサイン。

子供みたいに揺れる瞳。

会社を出ていく後ろ姿。


あんまりやわ、こんなん……。


桂木さんはずっとずっとがんばってきたのに。


トイレットペーパーをガラガラと引きちぎり、涙を押さえ、鼻をかむ。




そうして涙が治まるのを待って個室を出ると、そこには綾香さんが仁王立ちして待ち構えていた。


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