流れ星スペシャル
「流れ星の経理やってるし、普段から桂木さんって、急ぎの見積書とか関係ないのに沢井に頼むやろ? それにあんた家近いし……、会社までチャリで通ってんの沢井だけやで。ここからアメ村なんて、すぐそこやん」
「はぁ」
「わかってる? 流れ星の営業時間は夕方から深夜2時までやろ? 普通の子は終電までしか働かれへんけど、あんた自転車やからラストまで働けるやん」
「あ、そっか」
そこで綾香さんは、また大きなタメ息をついた。
「沢井、連れて行かれる要素、あり過ぎやねん」
「ほんまやわ」
「ほだされたらあかんよ。桂木さんに頼まれても断るんよ」
「う……ん」
それからギロッと、綾香さんはわたしを睨む。
「あんたもう若くないねんで。せっかく9時5時勤務のデスクワークしてんのに、何が悲しぃて、今さら飲食に身を転じなあかんのよ。好きでやってるならともかく、深夜2時までの労働なんて、ええ年してキツすぎるわ」
「……ですよね」