流れ星スペシャル
「いや、ちがいます」
オレだって社長のことなら知っている。
豪放にして繊細。どんな案件も妄信することなく、あらゆる角度から冷静に分析する人だ。
そして好機を逃さない判断力と行動力。
入社以来オレは何度も驚かされてきたし、そんな社長を心から尊敬していた。
「そんな辞め方をするほうが悪いです。いったいどういうつもりでこんな……」
オレは、そう呻った。
「しんどかったんかもしれんし、バカバカしくなったのかもしれん。店を任されて、歯を食いしばってがんばっても、ボクは現場にはおらんからなぁ……。
こんな会社、何にもわかってくれへんと恨んでいたのかもしれへん」
他人事のように淡々と語る社長の分まで、オレはその店長にムカついていた。
「だったら、わかるように相談すればいい」
「飲食のド素人に相談したところで、どーせわからんわって思われてたんかな」
「それでもっ、相談すべきです」
子供の遊びじゃないんだ。
会社が金も時間もつぎ込んでいるひとつの事業を任されて、何も言わずに消えるなんて、ありえないと思った。