流れ星スペシャル
「キミがもし、この人事を左遷やと思うなら、蹴ってくれてかめへんよ。一課で今まで通りがんばってくれたらええ」
「は……い」
「でもな、一つだけ言っとくけど、これは消去法で選んだんやない。ボクは、キミがベストやと思ったから声をかけたんや。それだけはわかってな」
そう言うと社長は、真っ直ぐにオレを見た。
「あの……、なんでボクなんでしょうか?」
そうだ、それを一番聞きたかった。
「ボクは要領悪いし、人に対して気の利いた言葉もなかなか出てきません。ガラじゃないと思うから、学生時代のアルバイトでも接客業は避けてきました。
そんな自分がいきなり飲食店の店長なんて、とてもできるとは思えないんです」
マジメにそう訴えたのに、社長は朗らかに「ハハハ」と笑った。
「社内で一番の美女をゲットしたくせに、何言うてんの?」
「えっ、いや、それは、」
「桂木くん、キミは堅実で誠実な男や。それに粘り強くて根性が座っとる。6年間、そう思ってキミを見てきたよ」
そう言って、社長はまた深~くうなずいたんだ。