流れ星スペシャル
「もちろん会社が営業している時間にはオフィスにかけますが、夜とか、土日とか、わからないことがあったら直接連絡してもいいですか?」
桂木さんらしい誠実な言い方。
コクリと大きく、わたしはうなずいた。
「わたしのわかることなら、何なりと」
「ありがとう」
低い声がそう言った。
「わたし、桂木さんの番号わかるからワンコールしましょか?」
デスクの電話機の短縮ボタンを押せば、液晶に桂木さんの番号が出るはず。
「いや、このケータイは会社に返すから」
だけど桂木さんはそう言った。
「え、そうなん?」
「うん。電話は店にあるし、もう外から仕事の連絡を取り合うこともないし。自分のスマホを使おうと思ってます」
そう言って笑った桂木さんの笑顔が……、何だか胸をギュウッと締めつける。
ヒドイな、わたし。
心配している顔をして、自分だけは安全な場所にいるんだから……。
桂木さんにケータイ番号のメモを渡しながら、そう思った。