流れ星スペシャル
「だ、だ、だ、だ、」
厚い胸板を跳ねのけるようにして、立ちあがった。
「だ、大丈夫ですっ」
ハァハァ、ゼイゼイ……。
書棚に手をつき、息を整える。
心臓がバクバクしていて、うるさい。
「沢井さん?」
ハッと振り向くと、桂木さんはわたしの過剰反応に戸惑ったように突っ立っていた。
「あ、す、すみません! 重かったでしょ?」
「いえ、全然。大丈夫でよかった」
ホッとしたように笑った桂木さんの顔を、恥ずかし過ぎて、まともに見られない。
あんなに密着して五感を揺すぶられ、身体中が火照って、パニックを起こしている。
ふ、不謹慎だ。
こんな人事異動のこんな深刻な事態の最中、わたしってば、何?
ゴメン、桂木さん。
ゴメン、リカコさん。
ゴメン、神様……!