流れ星スペシャル
「いらっしゃいませ」
その客たちに軽く頭を下げて、オレは店の中へと入る。
『待ち』が2組か。まぁまぁやな……。
アルバイトのシフトは、今夜も8時入り。
レギュラーのバイトくんたちは、もっと早くから入ってるっていうのに。
まー、オレは店長に嫌われてるから仕方ない。
夕方5時から深夜2時まで営業しているこの店の、客足のピークに合わせて出勤する。
それも週末のみで、客の少ない平日は完全オフ。
それが今、この店におけるオレのポジションだった。
日曜らしく満席の店内。
天井からぶら下がるライトが、各テーブルごとに立ちのぼる湯気と熱気を浮かびあがらせていた。
店の奥の厨房は、客席に向かって一際明るくライトアップされたステージみたいだ。
特注の大きな鉄板が、カウンター席と向き合うように設置されていて、耐熱ガラスで仕切られた向こうで『焼き』の二人が忙しく手を動かしているのが見えた。