流れ星スペシャル
「すごい、桂木さん……」
「うん」
黒い瞳が真っ直ぐにわたしを見た。
「だから大丈夫なんで」
「え?」
「沢井さんはこのオフィスで、今まで通り流れ星を支えてください。ボクは誰も連れて行きませんから」
そう言うと、彼はペコリと頭を下げた。
そうして、タイムカードを回収した箱と、さっきのファイルを小脇に抱え、書庫を出て行く。
「ありがとう」と言い残して。
ありがとう、だなんて……。
ありがとう、なんて……。
急いでスツールを片づけ、桂木さんの後を追うと、オフィスのみんなの視線が痛かった。
前を歩く桂木さんに注がれる好奇の眼差し。
ひそひそとささやかれる憐れむような声。
そんなものには気づいてないかのように、桂木さんはスタスタと歩いていく。
気づかないわけないのに……。
一緒に歩いてよくわかった。
この空気を……、
向けられる視線を、逸らされる視線を、感じないわけがなかった。
そして、綾香さんの言葉。
拒絶反応を示したわたしの態度……。