かわいい俺様くん


「人の彼女つかまえて何してんだよ」


教室に入ってきた柴崎が睨みをきかせる。ヒーロー登場。あたしが遅いから見に来たのかなあ、なんて呑気に考えた。


「何だよ。お前が悪いんだろ!」

「お前、何呼び出されてついてってんだよ。これで3回目だろ。ほいほいついていくんじゃねーよ」


なぜかあたしが怒られた。男子生徒さん無視されてる。あたしのことをつかんでいた腕を、柴崎が引き剥がす。

そう、3回目。そのうち2回が柴崎への当てつけだった。1回は女子から。
悲しいよね。いい奴なのに。悪くないのに。だからさ、知られたくないからあたしだけで事を済まそうとしているわけじゃん。


なのに毎回そうやって現れるんだもんなあ。まるで正義の味方みたいに。一応は律儀に下で待っててくれるし。あたしの“用がある”って言葉を信じてさあ。

この前の先に帰っててって言ったのはすぐに嘘ってバレたらしくて、来てくれた。


「だってほんとに告白だったらかわいそうじゃん」

「そんなわけねーだろ。帰るぞ」


柴崎は男子生徒さんには目もくれず、背を向けた。


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