幻聴レクイエム
季節は、夏。
地球温暖化のせいか、気温は例年より上昇しており、今日は運悪く最高気温を出してしまった。
その為、昼間を歩く人の姿などないのはずだが、名刺の住所を頼りに歩く女性が、一人丘をゆっくりと登っている。
「あ、暑い…。今日にするんじゃなかったなぁ」
女性は肩で息をしながら、鞄からハンカチを取り出し、汗を拭いていく。
白い帽子に白いワンピース。
見るからに涼しそうな感じはするが、やはり暑さは勝てないようだ。
「はぁ…、この名刺に乗っている家が見つからない。一体どこにあるのよ…」
目的地に辿り着けないことにか、それと暑さに苛立っているのかは分からないが、女性から歩く気力すら見られない。
精神的にも滅入っているのだろう。
「とにかく、探そう。早く探偵さんに会わなくちゃ」
女性を動かしているのは分からない。
だが、この人は何かを求めているのだろう。
「行こう」
女性は再び目的地を目指して歩き出した。