幻聴レクイエム
「あの…」
「久遠さんに会いに来たんですか?」
「え、あ…はい」
「そうですか。久遠さんが居るかは分かりませんけど、とりあえず入ってください」
女の子はそう言いながらドアを開け、女性を招き入れる体制を取った。
女性は少し迷いながらも女の子の招き入れに、素直にしたがう。
「失礼します」
恐る恐る事務所の中に足を踏み入れた時に見えた光景は、一言で言えば質素な感じだ。
壁は白いコンクリートで覆いつくし、全体が明るく見える。
部屋の中心に長机と灰色のソファーが置かれ、周りには沢山の本棚が隙間なく並べてあった。
「そこのソファーに座っててください。すぐに久遠さんを呼んできますね」
「分かりました」
女の子は女性にそれだけを言うと、その辺に置いてあったリモコンを取り出しクーラーを付ける。
そして、奥に続いていると思われる部屋に入っていった。