幻聴レクイエム
女性は女の子が入っていったのを確認すると、歩き疲れたのか、ゆっくりとソファーに持たれかかった。
「ふぅ」
この暑さの中で歩いていた為、さすがに体力が消費されているだろう。
只の軽い目眩さえも相当、疲れを感じるに違いない。
「暑かった…」
ふと、額に手を当てていると、大量の汗が出ているのに気付く。
直ぐ様、持ってきたカゴバックの中からピンク色のハンカチを取りだし、汗を拭いた。
「それにしても、本当に大丈夫なの?この事務所」
女性はここの場所を記された名刺を目の前にある机の上に置く。
表を向いていた名刺を、裏向きにしてそこに書いてある文字を読み直した。
「灰里さんが居ないからってお昼まで寝ないで下さいよ」
「すみません、いつもの癖で」
微かにだが、女の子が入った部屋から声が聞こえてくる。
そして声が一瞬途絶えた時、ゆっくりとドアが開いた。