黒狼と猫の総長様



『……若、ありがとうございます』




私の前に来て頭をさげる月夜に、顔を上げさせ、笑う。




『月夜。


私は、今まで月夜に世話になったから。

当然だろう?』




その言葉に、月夜は一瞬固まり、我を取り戻したかと思うと、ワタワタと慌てだした。




『……月夜?』





『わ、若が、俺に助けっ……⁉︎』





ああ、うん。



混乱したのかな?



……がらにもなく、お礼を言ったつもりだったのだけれど。




『……月夜、落ち着け』







見ていて面白いけど、明日は、大切な日だから。と、この辺で月夜を落ち着かせる。






『……玲彩』





『何でしょう? 透さん』





『お前が進めろ。

俺らは、反対しねぇ』




そう言って私の頭に手を置き、ポンポンと撫でる透さん。





『……透さん⁇』





私がそう言ったのと同時に、透さんの手が私から離れる。



否、離された。





『親父、いつまで触ってんの?』





翔によって。




腕を掴まれながら翔に睨まれる透さんは、ニヤニヤと笑いながら何かを翔に耳打ちする。




その瞬間、翔の顔に熱が集まり、一瞬で赤くなっていった。




『……っ、うぜぇ』




顔を背けたまま、自分の座る場に戻った翔を見て口を開く。






『……集まったのは、明日。


加藤との決戦の事についてだ』






真剣な声色になった私に、幹部室の空気が張り詰める。





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