黒狼と猫の総長様
『……玲彩』
下から、私を呼ぶ声がして、下に視線を向ける。
『……探した』
そこには、案の定、私を見上げ笑う翔がいた。
『……降りてこい』
そんな翔の言葉を無視して、翔に声をかける。
『……翔は、どう?』
『どうって、何が』
『満月は、好き?』
『……ああ』
私の言葉に、肯定の意を示す翔。
『……なぜ?』
そう聞いても、翔から返事がこない。
何事かと思い、下に視線を向けると、そこには誰も立っていなかった。
……幻覚?
違う。
私は、ちゃんと、会話していた。
なら、翔はどこに?
そんな考えがよぎった時、ガサガサっと木を揺らし、何か黒いものが視界に入る。
何かと思い視線を向けると、平然とした顔で私の隣に腰掛ける翔だった。
『……翔?』
『あ?』
『なんでそこに』
『登ってきたんだよ』
登ってきたって言っても……。
翔を見ながら、溜息を漏らす。
何も言っても、無駄だ。