黒狼と猫の総長様
『俺はさ、月、好きだよ。
月は、1人だけじゃ、必要ない存在なんだよ』
そう言った翔に、首をかしげる。
『月は、1人でも、必要とされてるわ』
そんな私の言葉を、翔が否定する。
『それは違う。
月は、太陽の光を反射して光っている。
つまり、月は、太陽という存在がなければ、必要とされない存在なんだよ』
そう言いながら私を見る翔。
『……この世に、1人で生きていける人間なんていない。
皆、誰かの力を借りて、誰かと助け合いながら生きている』
そこまで聞いて、ようやく翔の言いたいことがわかる。
『……私に、頼れって言いたいのね』
『ああ』
私の解釈に、翔は何も言わず素直に肯定する。
頼れ。
それは、簡単でいて難しい。
難しく思えて、実は簡単なこと。
一度頼れば、頼ることに慣れ。
頼る前は、頼ることを恐れる。
私にとっての頼る。は、後者の方だ。