黒狼と猫の総長様
『俺は、お前を守る。
何が、あってもな。
難しいことは言わない。
だから、俺を頼れ。
俺は、お前を受け止める』
翔が、私の目を見ながら真剣な表情でそう言う。
『……後悔しても、知らない』
『後悔なんてしねぇ。
好きな奴に頼られて、嬉しくない奴なんていねぇんだよ』
そう言って笑う翔に、顔の熱が集まるのがわかって、顔を背ける。
『……玲彩』
翔の呼びかけに、無視を貫く。
『……こっちを見ろ。玲彩』
しかし、その、有無を言わさぬ声色に、渋々と翔の顔を見る。
『……っ』
翔が、優しそうに、幸せそうに。
嬉し、そうに私に微笑みかけているのがわかり、余計に顔の熱が上がる。
『……玲彩』
私のほおに手を添え、名前を呟く。
そのまま、何も言わず。
中途半端な満月の下、伸びる私達の影が重なっていったのだった。