黒狼と猫の総長様
それだけ言って、顔を手で覆い隠す。
絶対、今、顔が赤い。
それだけは言える。
『……知ってる』
そう言いながら、翔が私を抱きしめる。
『……なんで泣くの』
それが、私に涙を見せないためだと知っていて、そんな質問をする。
『……っ、不安だったんだよ、正直』
『……なにが』
『玲彩は、兄貴が好きだった、だろ?
俺は、兄貴には、なに1つ勝てない』
勝ったことがない。と。
そう翔は言った。
『……別に、勝つ必要はない』
なんのために勝負するのか、謎だけど。
『……祐希にも、言った』
さっき、手を合わせて。
『……祐希。
私ね、翔に改めて自分から告白する事にする』
ってね。
『兄貴に負けないくらい、好きだ』
『……うん』
『玲彩、俺と、付き合ってくれ』
こんな時まで命令口調の翔には笑える。
嫌いだったのに。俺様だなんて。
それが今では心地いいとでさえ思っているのだ。
『……よろしく、翔』