黒狼と猫の総長様
『……ん?』
『だから、壮一なんかがエスコートするのがムカつく』
私に顔を見せないためなのか、頭に回した腕に力を込める翔。
『仕方ないでしょう』
『……知らねぇ』
私の言葉にも耳を貸さず、動かない翔。
『『翔君!
みんなの前でイチャイチャ禁止だよ!』』
そんな翔を見かねたのか、何なのか、愛哉と愛斗が力尽くで私をかけるから引き剥がす。
『……そうだよ、玲彩、俺の』
そう言って引き剥がされた私に抱きついてきた琉を見て、思わず青ざめていくのを感じる。
……これはまずい。
『……琉』
私の予想通り、黒いオーラをバンバン放ちながら琉を見る翔は、まさに般若。
『り、琉。離れた方がいい』
そう言って引き剥がそうとする私に、琉も耳を貸さず、抱きつく力を強めていく。
『離れろ、琉』
車だから立てないのが幸い。
立ててたら、蹴られてたと思う。
『……琉⁇』
『……翔ばっかり。
俺だって、玲彩に抱きつきたいのに』
私の呼びかけを完全無視した琉は、そう、真顔で一言言った。
……あーあ。
これこそ、あれだ。
火に油を注ぐ。