黒狼と猫の総長様
『……みんな、私は先に行くから』
みんなを見ながらそう言い、月夜を見て、作り笑いを浮かべる。
……やめようか、作り笑いなんて。
作り笑いをした瞬間、そんな考えが頭をよぎり、思いっきり無表情になる。
笑う必要なんてない。
私が、媚びる必要なんてない。
ここでは、私は媚びられる側。
なら、無表情の方が話しかけられないで済むはずだし。
『……玲彩様、それで行かれますか?』
私の表示を見てそう言った月夜に頷いて、車を降りる。
目の前の、パーティー会場を見上げて大きく深呼吸をする。
始まる。
今日、この夜で決まる。
壮一は、絶対に夜猫から消させない。
『……玲彩様』
私を呼んだ月夜に頷き、私はみんなより一足先にパーティー会場に入る。
中に入ると、私を見て、驚いたように頭をさげる大人達。
『……月夜、米田の当主は?』
周りに聞かれるよう、こっそりと月夜に聞く。
……こんな人が多いのに、見つけきれるわけがない。
『米田の当主様でしたら、あちらに』
そう言った月夜の視線の先に、ドレスやスーツなどを着ている客とは違い、和服を身にまとった男。