黒狼と猫の総長様
翔の言っている意味がわからず、翔のさす方に視線を向けると、綺麗な三日月と、夜空に浮かぶ星が綺麗に輝いていた。
……でも、なんで星が……。
『ここ、周り何もないだろ?
月夜さんに頼んで、ここにしてもらったんだ』
そう言って笑う翔に、慌ててこの会場の位置を思い出す。
確かに、ここは周りに何もなかった。
まさか、ワザワザ月夜がセッティングしてくれていたなんて。
そんな事、気づきもしなかった。
だから月夜は私にわざとあんな事を言ったんだ。
さっきの紙を私に突き出しながら言った月夜の言葉は、この為なのだと思うと、思わず笑みが零れる。
『……俺で、いいのか?』
改めたようにそんな事を言う翔に、私は緩く笑みを浮かべる。
『……当たり前。
逆に、誰がいるの?』
『言うな』
私の言葉に笑った翔が、なぜか膝をついてしゃがみ込む。
……え、何?
ここで具合が悪くなっても、病院には運べないんだけど。