黒狼と猫の総長様
『カバン、私だって持てるわよ』
そう言った私に、月夜は呆れた笑顔を浮かべる。
『俺が持ちたいんですよ』
『……変なの』
『若って、本当男心がわかりませんよね』
そう言って私の隣を歩き、慣れたように玄関を開ける月夜。
『……貶してるの?』
『褒めてるんですよ。
若ほど純粋な女の子って、珍しいですから』
そう言って笑う月夜のお腹に、肘を入れる。
『褒めてるって言いましたよね、俺!』
痛そうにお腹を抱えてうずくまる月夜を見て、可笑しくなり笑った。
その笑い声のせいで、バレないようにしていた部屋の襖が開く。
『玲彩じゃねぇか!!!
こっち来いよ!』
『ちょっと……‼︎
私、疲れて……』
『玲彩、こっちきて飲め』
『玲彩、最近、遊んでないぜ?』
『玲彩、学校、楽しいか?』
一人に引っ張られ、中に入ると、ワラワラと私の周りにみんなが集まり、私に話しかけてくる。
……みんなのことは嫌いじゃない。
むしろ、好きだ。
だけど今は、眠らせて欲しい。
疲れてるの、私。