僕等はまだ恋を知らない
「俺と九条が走ってたら、ちょうど倒れそうな澪と沙耶が居たんだよ」
「そうだったんだ……」
なんてタイミングがいいんだろう。
しばらく誰ともすれ違わなかったのに、たまたま大翔と九条くんが来てくれるなんて。
「沙耶は俺が運ぶから、九条は澪を頼んだぞ」
「俺に命令すんなっつーの」
「ひゃっ………!」
大翔に文句を言いながらも、私の体をひょいっと持ち上げた。
九条くんにお姫様だっこをしてもらうのは2回目になる。
「沙耶はともかく私はいいって……!」
「そんなフラフラした体じゃまた倒れんだろ?黙ってろ」
「う、うん……」
それ以上は何も言えなくて、九条くんに身を預けた。