僕等はまだ恋を知らない
九条くんと大翔の勝負が気になって、私は大事なものが見えていなかった。
沙耶の頬が赤いこと。
大翔が苦しそうに私を見ていたこと。
九条くんの心臓がうるさいこと。
私は何も気づけなかった。
自分のことばかり。
この時、みんなの異変に気付けていたらよかったのに。
そうしたら、傷つくこともなかったのかな。
九条くんの近くに居るとなんだかほっとする。
まだ出会ってからそんなに経ってないのに、おかしいね。
ふわり、ふわり、と揺れる秋風。
九条くんに気づかれないように、私の好きな青い瞳を見つめていた。