僕等はまだ恋を知らない
「まぁ、倉橋は気に入ってるけど」
「そんなこと言っても何もあげないけど……」
風で揺れる私のリボンを軽く触りながら、ニヤニヤと笑う九条くん。
最初にあんな出会い方をしたせいか、今では「面白いやつ」と微妙な気に入られ方をしてしまった。
仲良くなれたのは嬉しいけど、首を傾げたくなる。
「たしかに九条くんに好きな人ができたらすぐに噂になるもんね」
「直の女子人気はすごいよ」
「香月には言われたくねぇけどな」
ずっと黙っていた大翔がようやく口を開いたかと思えば、すぐに九条くんに一括くらった。
大翔も九条くんもどちらも同じくらい人気はあるのに。