僕等はまだ恋を知らない
さっきまでの調子はどこへ行ったんだ。
逃げる後ろ姿はどう見ても怯えた小動物。
「まったく……沙耶に手を出すなんて最低……!」
怒りはなかなかおさまらないし、思い出しただけでも腹立たしい。
「み、澪………かっこいい……!」
いつの間にか静まり返っていた中庭には、沙耶の小さな呟きがよく通る。
キラキラとした瞳で私を見つめるその姿は、まさしく天使。
「あはは……勢いでつい……」
首の後ろに手を当ててとりあえずの苦笑い。