僕等はまだ恋を知らない


……………九条くんじゃ、なかった。


ううん、助けてくれたのにそんな贅沢言っちゃだめなのはわかってる。


だけど、どこか期待してたの。


“あの時”みたいに九条くんが助けに来てくれるって。


そんなはずないのに…………。





「あっ………」



恐怖から解放されてホッとしたのか、冷たいものが目からこぼれ落ちてきた。


「こんなことくらいで泣くなんて、変かな」


何度目を擦っても止まらない。


おさまっていた震えまでもが、勝手に復活している。


< 235 / 434 >

この作品をシェア

pagetop