僕等はまだ恋を知らない
「もしかして恋の悩みとか〜?」
「あはは、そんなわけないよ」
その通り、恋の悩みだ。
陸上部のマネージャーをずっとやってきたのも、大翔くんと一緒にいるため。
澪がいない空間で隣に居れば、いつか私を見てくれるんじゃないかという期待もあった。
たしかに部活の間は誰よりも大翔くんの近くにいる。
でも、距離が縮まっている気はしない。
真剣な眼差しでゴールを目指して走る大翔くんの目には、いつも誰が映っているのか。
『お疲れ様』と何度タオルやドリンクを差し出しても、必ず1度私の隣を見るの。
居るはずのない澪の姿を探してる。