僕等はまだ恋を知らない


「………今だけ、許してほしい」


懐かしい大翔の匂い。

温かい腕に包まれた瞬間、一瞬心が揺らいでしまった。


このまま九条くんのことは忘れて、大翔を好きになれたら楽なのに。


ずっと一緒に居たんだもん、幸せな毎日が待ってるに違いない。



「俺は今でも澪が好きだ」


優しい大翔の声はボロボロになった心によく染み渡る。




「そんなに泣くほど辛いなら、俺を好きになればいいのに」



さっきより抱きしめる力が強くなった。


大翔の胸の音がはっきりと聞こえる。


2度目の告白にどう答えていいかなんてわからない。


この苦しみから早く抜け出したいという想いだけが募る。


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